作品紹介
届かなかった、あのマウンドに ──
少年たちの生きた夏
鋭い感性と、繊細な表現、演者の持つ力を最大限に押し出す粋な演出で数多くのヒット作品を手掛け、舞台界という荒野を開拓してきた西田大輔が本作で描くテーマは、第二次世界大戦中、日本で”野球”に憧れを抱き、白球を追いかけた少年たちの物語。

戦時中の日本では、野球は敵国の国技であるが故に、「セーフ」、「アウト」と言った野球用語は全て日本語化される他、野球を行うことすら球児にとっては厳しい時代だった。

そんな環境下で、特攻隊として飛び立つ前に最後の願いとして行った野球試合を描く。

西田大輔を筆頭に舞台を形作るのは、現在読売ジャイアンツ2軍監督を務め、甲子園通算20勝の戦後最多記録を保持する桑田真澄が野球監修を担当。数々のCMやドラマ、舞台の主題歌に起用され、唯一無二のメロディーを生み出す笹川美和が音楽で彩ります。
あらすじ
1944年、夏。
グランドでは、野球の試合が繰り広げられていた。甲子園優勝候補と呼ばれた伏々丘商業学校と、実力未知数の有力校、会沢商業高校の試合である。

会沢の投手・穂積が、捕手・島田の構えるミットを目掛けてボールを投げる。ど真ん中に入った球は力強く打ち抜かれた。穂積と幼馴染の伏々丘四番打者で投手・唐澤も高い空を見上げた。
それは紛れもなくホームランだった ── 。

戦況が深刻化するなか、敵国の競技である野球は弾圧され、少年たちの希望であった甲子園は中止が宣告された。

兵力は不足し、学生たちには召集令状が届く。甲子園への夢を捨てきれず予科練に入隊した少年たちは、”最後の一日”に出身校同士で紅白戦を行う。
「たとえあと一球でもいいから投げていたい。時間があるなら何度でも。」
野球を心から楽しみ、仲間を思い、必死で白球を追う少年たち。
それぞれの思いがグランドを駆け巡るなか、最後の試合が幕をあける。
2024年上演にあたり
戦争が終結し、甲子園が再開されて以降、約70年もの間中止されることはなかった甲子園が再び中止となる事態があった。2020年の第102回大会だ。この年、新型コロナウイルスの感染拡大を予防とした理由で、戦後以来史上初春夏大会連続で中止となってしまった。

“野球がしたくてもできない”という球児たちの葛藤や無念さ、そして白球に憧れる強い思いというのは、時代背景は違えど、通ずるものがあるのではないか。今だからこそ描ける、舞台『野球』があるかもしれない。そんな西田の思いをもとに、再演は動き出しました。

2018年夏に東京・大阪にて上演し、観客からの再演希望が多く寄せられた本作を2024年、新たなキャストが集結して蘇ります。

観劇後必ず心揺さぶられる少年たちの“生きたい”という希望を、是非劇場で見届けてください。